睡眠負債のチェックと改善方法

NHKの特集で話題となっている睡眠負債。

 

債務超過の状態が続くと、日々の生活や仕事の質が低下するだけでなく、うつ病、認知症、がんといったさまざまなリスクもあるとされます。

 

この記事では簡単なセルフチェックや睡眠負債を返済する方法、改善についてまとめてみました。

 

 

 

睡眠負債とは

睡眠負債とは、睡眠の借金アメリカのスタンフォード大学の研究者が提唱した言葉で、慢性的に睡眠時間が不足している状態です。

 

これまでは、「睡眠不足」という言葉が一般的でしたが、こちらは定義としては1日や、多くても数日など、限定的、短期的に睡眠が不足した状態を示します。

 

一方、この記事で取り上げている「睡眠負債」は、冒頭で述べたように、睡眠の不足が長期化、慢性化してしまい、常に睡眠不足になっている状態です。

 

睡眠には、日中の活動でたまった心身の疲労を回復したり、収集した情報を脳内で整理するという大切な役割があります。

 

しかし、睡眠時間が足りないと、こうした回復活動を体が充分に行うことができません。回復が終わらないうちに起床時間がきてしまい、翌日の活動が始まることになります。

 

このように、ダメージがなくならないうちに新しいダメージが蓄積していく状態が、ちょうど借金の返済に追われている様子に似ているということで、「睡眠負債」という名称が生まれたようです。

 

これまで深刻に考えられてこなかった睡眠時間の不足について、警鐘を鳴らしたものといえますね。

 

 

睡眠負債になると、どんな症状がでる?

わかりやすい症状としては、日中に眠くなります。

 

仕事中や授業中に眠くなる、というのは誰にでもあることなので、拍子抜けするかもしれませんが、睡眠時間が充分に足りていれば、日中にそれほど眠くなることはそれほどないはずなのです。

 

我慢できないほどの眠気を感じて、ときには作業中にもかかわらずフッと寝落ちしてしまう、しかもこのようなことがしょっちゅうある、というのは、やはり要注意のコンディションです。

 

疲労回復が追いつかないため、強い疲労感や倦怠感を感じることもあります。また、疲労によって脳の働きが低下して、注意力や集中力が低下したり、意欲の低下、不安や抑うつ気分といった精神の不調が現れることもあります。

 

食欲不振や胃腸障害、筋肉痛、風邪をひきやすくなるなど、健康上のトラブルに発展することもあります。

 

睡眠負債による主な症状
肉体的な症状

強い眠気
疲労感・倦怠感
不眠
筋肉痛……など

精神的な症状

注意力散漫
物忘れ
無気力
意欲低下
不安・抑うつ気分
落ち着きがない
協調性の欠如……など

 

 

睡眠負債によって引き起こされるリスクとは?

このように、睡眠負債によって現れる症状と一口にいっても、さまざまです。睡眠の不足が、全身に多様な形で影響を及ぼすことがわかりますね。

 

睡眠負債が軽いうちは、上で述べたような心身の不調という形で現れていますが、睡眠負債が積み重なっていくと、体調不良から疾患へと移行します。

 

  • 食欲不振、胃腸障害
  • 脳の働きが低下することによるうつ病、認知症
  • 免疫力の低下によって風邪をひきやすくなる
  • ガンのリスクが高まる

 

などの可能性が指摘されています。

 

睡眠負債は、心身の不調だけでなく、深刻な疾患の原因にもなる

 

睡眠負債がもたらすトラブル

 

睡眠不足のとき、脳内ではこんなことが起きています

近年、睡眠時間の不足によって脳の細胞が自己崩壊を起こすことが、イタリアのマルケ工科大学の研究によって確かめられました。

 

生物の細胞の中には、「食作用」という機能をそなえた細胞があります。病原微生物や死んだ細胞などの異物を取り込んで、体の組織の清掃を行う役割を持っています。

 

脳にかんしていうと、神経細胞どうしをつなぐシナプスの中で、不要になったものを除去したり、回路の再形成を行うのが、主な役割です。

 

しかし、睡眠不足が続くと、食作用を持った細胞が必要以上に活性化し、その結果、まだ使われているはずのシナプスを破壊したり、シナプスの接続を分解してしまうのです。

 

生物の脳は、神経細胞どうしの情報伝達によって働きます。

 

伝達を担っているシナプスが破壊されると、脳の機能自体が低下することになり、うつ病やアルツハイマーなどの脳変性疾患などの原因になります。

 

研究チームは、睡眠と脳細胞の関係についての研究を続ける予定だとか。今後の研究報告が気になりますね。

 

 

睡眠負債チェック。あなたの睡眠負債は?

睡眠が足りているかどうかは、自分でもなかなかわかりづらいものです。しっかり寝ているつもりでも、眠りが浅くて、結果的に睡眠が不足していることもあります。

 

睡眠負債がたまっていないか、セルフチェックしてみましょう。

 

 

簡単なセルフチェック法……エプワース眠気尺度テスト

8種類のシチュエーションを提示します。それぞれのシチュエーションのときに、どのくらい眠気を感じるかを点数化していく方法です。

 

  • 座って読書をしている時
  • テレビを見ている時
  • 人が大勢いる場所で座って何もしていない時
  • 車に乗せてもらって1時間位ずっと乗っている時
  • 午後休息をとるために横になっている時
  • 座って誰かとおしゃべりしている時
  • 昼食後、静かに座っている時
  • 運転中、渋滞や信号で数分間止まっている時

 

以上です。

 

  • 0点……眠くならない
  • 1点……まれに眠くなる
  • 2点……ときどき眠くなる
  • 3点……眠くなることが多い

 

すべてのシチュエーションについて点数をつけたら、合計します。11点以上になった方は、睡眠負債が積み重なっているリスクがあります。

 

睡眠負債がどのくらいたまっているか、計算してみよう

どうやら睡眠負債がたまっていそう……。

 

睡眠負債がどのくらいたまっているのかは、休日と平日の睡眠時間を比較することで計算することができます。

 

休日に、寝室を静かな環境にして、目覚ましをかけずに眠れるだけ眠ってみます。目が覚めて、二度寝ができそうならば、そのまままた眠ってください。

 

眠ろうとしても眠れない、完全に目が覚めた、という状態になったら、全体の睡眠時間を合計して、ふだんの睡眠時間と比較するのです。

 

睡眠時間の差が2時間以下であれば、睡眠負債はほとんどないと考えてかまいません。でも、3時間以上になった場合は、睡眠負債がたまっています。差が大きくなるほど、負債が積もっていることになりますね。

 

 

どのくらい睡眠時間をとれば睡眠負債がたまらない?

年令 必要な睡眠時間
1才未満 12時間〜17時間
1才〜5才 10時間〜14時間
6才〜13才 9時間〜11時間
14才〜17才 8時間〜10時間
18才〜 7時間〜9時間

 

NPO法人、「アメリカ睡眠財団」(NSF)が発表した、年代ごとの適正睡眠時間は、このようになっています。子供のうちはわかりますが、大人になってからも意外と長い睡眠時間が必要なんですね。

 

ただ、実際にどのくらい睡眠を取るべきかは、これは人によって異なります。5〜6時間も眠れば大丈夫、という方もいますし、10時間以上の睡眠時間が必要な方もいます。

 

目安としては、「起床から4時間後に眠気を感じるか」が、ひとつの判断基準になります。

 

以上、3種類のチェック方法を利用して、自分に合った睡眠時間を確かめてみてください。

 

 

睡眠負債を返済するには…。改善方法

睡眠負債のリスクはわかった。適正な睡眠時間もわかった。じゃあ今晩から8時間、しっかり寝よう!

 

……と思っても、忙しくて充分な睡眠時間を取れない、という方は多いと思います。統計でも、仕事や家事、勉強などのせいで、睡眠時間が少なくなっていると答えた方がかなりの割合になっています。

 

まとめて睡眠時間をとるのが難しい方は、日中の短時間睡眠を組み合わせることで、睡眠負債を解消していきましょう。

 

パワーナップ

「ナップ」とは昼寝のこと。通常の昼寝と違い、午後の早い時間帯にごく短時間の間に睡眠をとる方法が、「パワーナップ」です。

 

  • 睡眠をとる時間帯は、正午から4時あたりまで。都合のよいタイミングでOK。
  • 睡眠時間は15分〜20分ていどにする。
  • アラームを活用して、睡眠が30分を超えないように注意。
  • 必ずしも横になる必要はなく、机に突っ伏してうたた寝してもよい。

 

パワーナップのポイントは、「睡眠時間」です。

 

15分から30分というのは、脳が、まだ浅い「レム睡眠」の状態にある時間で、脳内では覚醒中に取り込んだ情報の整理が行われます。そのため、脳の休息にはこのていどの睡眠で、とりあえずは充分なのです。

 

電車でちょっとうとうとしただけで、頭がすっきりした、という経験をしたことがある方も多いと思いますが、これは、知らず知らず、パワーナップが実践されていたためです。

 

逆に、睡眠時間が30分をオーバーしてしまうと、体が休息する深い睡眠のモードに入ってしまうため、起きるのがつらくなりますし、起きたあとにだるさや、ぼんやり感が残ってしまうことになります。

 

カフェインナップ

短時間眠ってパッと起きるのが、パワーナップの理想なのですが、なかなかうまくいかない、という方は、睡眠を取る直前にコーヒーやお茶でカフェインを摂ってみてください。

 

カフェインの覚醒効果は、飲んでからだいたい20分後に出始めるので、ちょうど起きるタイミングで、カフェインが効いてくれます。

 

目を閉じるだけでも意義がある

学校や職場みたいに落ち着かないところでは眠れない、という方は、15分くらいじっと目を閉じているだけでも、パワーナップを取ったのと近い効果があるといわれています。

 

目を閉じることで外部からの情報を遮断し、脳を休息させる作用があります。

 

 

ホリデーナップ

パワーナップは。短時間で脳を休める効果はありますが、体の疲労を回復させるためには少し時間が足りません。

 

そこを補うために、休日にはやや長い、90分の睡眠を取りましょう。

 

90分というのは脳がレム睡眠から深いノンレム睡眠に移行して、また眠りが浅くなる、1サイクルの時間です。そのため、90分にアラームをセットしておくと、スムーズに目を覚ますことができます。

 

  • ホリデーナップはやや時間が長いので、ベッドやソファに横になったり、リクライニングチェアなどで行う。
  • 90分を超えないように、アラームをセットしておく。
  • 遅い時間にホリデーナップを取ると、晩の睡眠を妨げてしまうため、午後3時〜4時には起きるようにする。

 

 

睡眠の質を上げるために、光と食事に気をつける

睡眠負債を補うためには、睡眠時間を確保するだけでなく、睡眠の質を上げることも大切です。

 

生活環境によっては、上で紹介したパワーナップやホリデーナップも、なかなか実践できないかもしれませんし、夜に良質の睡眠をとることは、やはり基本です。

 

就寝前に強い光を浴びるのはNG

人間の脳は、基本的に朝に明るい日光を浴びることで、体内時計の調節を行います。夜になると眠くなってくるのも、体内時計によって睡眠ホルモンの「メラトニン」が分泌されるためです。

 

しかし、夜に照明やテレビ、パソコンなどの明るい光を見すぎると、体内時計に狂いが生じ、メラトニンの分泌が低下してしまいます。

 

特に、パソコンやスマートフォンのモニターから発せられるブルーライトは、メラトニンの分泌に強い影響を与えることが報告されています。少なくとも就寝の1時間前には、テレビやパソコンなどは使わないようにしましよう。

 

食事は寝る2時間〜3時間前にすませる

食べたあとは胃腸が消化のために働き続けています。

 

そのため体の深部体温がなかなか下がらず、寝つきも悪くなりますし睡眠も浅くなります。寝ついてしまうと、今度は内臓の働きが低下するので、消化も悪くなります。

 

食べてすぐに寝ると牛になる、といわれますが、牛にならなくても体は壊してしまいそうですね。

 

夕食の時間を調整するのが難しい方は、たとえば夕方に一度、軽い食事を取っておき、遅い時間にはたくさん食べなくてもいいようにしておく、という方法もあります。

 

寝る前に、胃腸が消化活動にフル回転しているような状態を避けることがポイントです。

 

栄養補助食品で、ドリンクタイプやゼリータイプのものは、消化の負担が少ないので、こうした食品も活用しましょう。

 

睡眠負債は、昼寝などを活用して少しずつ解消しよう

睡眠負債の解消

 

休日にまとめて寝る、は有効?

普段、睡眠時間が足りていない分、休日は一日中寝てる、という方も少なくないようですが、睡眠をまとめて取る、いわゆる「寝だめ」は、睡眠負債の解消にはあまり効果がありません。

 

短期的に見た悪影響としては、日中に長時間寝たことで、夜に眠れなくなるということがあげられます。

 

結局、眠くならないので就寝時間が深夜を過ぎてしまい、月曜日の朝は頭も体もだるい状態で起きて、そのまま家を出ることに……。これだと、寝不足のまま、一日活動するわけですから、かえって疲労が積みあがってしまいます。

 

長期的な影響としては、体内時計が乱れるリスクが考えられます。

 

前述のように、人間の体は、光を感知することで体内時計の調節を行います。

 

もう少し具体的に述べると、起床して日光を浴びたところで体内時計がセットされ、約15時間後に睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されて、眠気を覚える、というのがメカニズムです。

 

でも、起床時間や就寝時間がバラバラだと、メラトニンの分泌もじょじょに乱れ、睡眠の質が下がってしまいます。メラトニンの分泌の乱れは、睡眠障害の原因になることも。

 

お金の負債は、大金が入ったところで一気に返済できるのですが、睡眠負債は「まとめて返済」はNG。睡眠は日々、コツコツと取っていきましょうね。

 

 

子供の睡眠負債について

子供は大人よりも睡眠負債に陥りやすく、また、その影響は大人よりも深刻だといわれます。

 

子供は体を成長させる必要がありますから、体内のさまざまな整理活動が大人よりもずっと活発です。当然、それだけ疲労もしますから、毎日しっかりと休息を取って、回復させる必要があります。

 

また、頭や精神も成長しているため、起きている間に大量の情報を取り込みますから、脳内で情報を整理する時間も充分に確保されなければいけません。

 

そのため、子供の睡眠負債は、心と体の成長に、ダイレクトに影響してくるのです。実際、慢性的に睡眠が不足している子供は、ほかの子供よりも発育が芳しくなかったり、注意力散漫、食欲不振などもあるといいます。

 

また、子供は、何か楽しいことがあると、眠気を感じないことがあります。修学旅行のとき、ぜんぜん眠くならなくて、夜遅くまで友達と騒いでいた、という経験がある方、多いですよね。

 

子供が眠気を訴えたら寝せる、という生活習慣だと、気がつかないうちに睡眠負債が蓄積しているリスクがあります。子供のうちは就寝時間と起床時間はあるていど、決めたほうがよいと思います。

 

 

睡眠負債をセルフチェックしてみよう

NHK教育で紹介された、チェックシートです。以下の9項目のうち、1つでも当てはまる、という場合は、睡眠負債の可能性があります。

 

  • 就寝時間が毎日夜9時を過ぎている
  • 夜の合計の睡眠時間は毎日9時間以下
  • 寝ている途中で目が覚め、その後30分〜1時間起きていることがある
  • 寝る時間と起きる時間が毎日バラバラ
  • 休日は平日よりも起きる時間が遅い
  • 朝、目覚めが悪く、自分から起きない
  • 目覚めた後もしばらくグズグズしている
  • 朝食を摂らない日がある
  • 朝食や夕食の時間が日よってバラバラ

 

 

まとめ

睡眠時間の不足について、これまではあまり深刻にとらえられていなかったように思われます。

 

でも、研究によって、睡眠の慢性的な不足は、中・長期的に体にダメージを与え、心身の病気などの原因にもなることがわかってきました。

 

これは怖い事実ですが、睡眠に対する意識が高まるのは、よいことではないでしょうか。

 

睡眠を見直し、心と体を日々、ケアしていきましょう。

 

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